四国旅客鉄道株式会社
川田翔太さん(仮名・社内SE) 42歳
働き方と暮らし、どちらも妥協しない。地元四国で得た理想のワークライフバランス。
長年、東京のIT企業で営業職として働いてきた川田さん。充実した日々を過ごしながらも、「このまま今の働き方を続けるのか」という漠然とした悩みと、故郷である四国への想いが心の隅にあり続けた。
そんな折に訪れたコロナ禍と家庭環境の変化が、ライフスタイルを見直す大きな転機になったという。
地元に腰を据えて働ける場所を探す中で出会ったのが、四国旅客鉄道株式会社(JR四国)の社内IT部門だった。現在は前職の営業経験を活かし、現場と技術をつなぐ役割として活躍している。
仕事と生活、どちらかを犠牲にするのではなく、両立させる働き方を選んだ川田さんに、四国へのUターン転職で得られた気づきと現在の暮らしについて伺った。
※本記事の内容は、2025年5月取材時点の情報に基づき構成しています。
- 過去の
転職回数 - 0回
- 活動期間
- エントリーから内定まで791日間
転職前
- 業種
- SIer
- 職種
- 営業マネジャー
- 業務内容
- 官公庁やインフラ企業などへのITソリューション提案、メンバーマネジメント
転職後
- 業種
- 鉄道
- 職種
- 社内SE
- 業務内容
- 顧客向け販売システムの開発、ベンダーコントロール、社内調整
営業経験を活かし、地域インフラを支えるITの現場へ。
現在のお仕事はどんな内容ですか?
JR四国の鉄道事業本部に属する「チケットレスプロジェクトチーム」で、鉄道サービスのデジタル化を推進する業務に携わっています。
このチームは鉄道事業本部の直下にあり、柔軟に全社横断的な連携を図れることが特徴です。チーム自体は独立予算を持っておらず、必要に応じて他部門に申請を行いながら進めていくため、社内調整力が求められるポジションでもあります。
業務では、アプリ開発に関連するベンダーとの交渉や契約調整、さらには社内の運用フローの整理といった業務にも関与します。前職で培った営業的な視点とITインフラに関する知識を融合させながら、ユーザー目線を忘れずにシステム運用の最適化を図っています。
入社1年目なので、まだまだ学ぶことは多いですが、「今、自分が果たすべき役割」に対してやりがいを感じながら取り組めています。
入社前のご経歴を教えてください。
新卒で東京のSI企業に入社して以来、約18年にわたって営業一筋でした。ITの知識がほとんどない状態からのスタートでしたが、現場で揉まれて経験を重ねながら体で覚えてきました。
私が担当していたのは、公共インフラや官公庁、流通系の大手企業など。提案内容もSES(技術者派遣)、公共系のインフラ系ソリューション、家電量販店向けのクラウドシステムにいたるまで、業種を問わず幅広いものでした。
営業としての調整や交渉、社内外との折衝など多くのことを経験しました。部下の育成や複数案件の管理も担い、営業という立場ながら組織運営の一端を担う場面も少なからずありました。
転職のきっかけは?
一番のきっかけは家庭環境の変化です。もともと、いずれは地元である愛媛の近隣エリアに帰りたいという気持ちはあったものの、それがいつなのか、はっきりとは決めていませんでした。
そんな中、コロナ禍で働き方や生活の価値観が大きく変わり、加えて父が他界したことで、改めて今後の人生を見つめ直しました。
妻ともじっくり話し合いを重ね、家族のことや実家の管理、今後の暮らしを考えると、「定年を待つよりも早いうちに帰るほうが現実的」と地元に戻る気持ちが固まっていきました。
また、営業として数字を追い続ける毎日はやりがいもありましたが、「この仕事を続けていくべきか」という迷いもありました。
このように、家族と仕事でいくつかの要素が重なったことで自然と「次のステップへ進もう」と気持ちが固まりました。
転職活動はどのように進めましたか?
地元へのUターンを意識し始めた頃にリージョナルキャリアにエントリーしたものの、当時は「いつか帰れたらいいな」という漠然とした気持ちで、そこまで積極的ではありませんでした。
仕事でも新しい役職に就いて環境が大きく変わったタイミングだったこともあり、しばらく転職活動から離れていました。
再び本格的に活動を始めたのは、それから約2年後。ちょうど大きなプロジェクトが落ち着いた時期だったので、「このまま進むか、一度立ち止まるか」とじっくり考えた結果、あらためてリージョナルキャリアのコンサルタントに連絡しました。
愛媛県に限らず四国全域でいくつか求人を紹介してもらい、他社の人材紹介サービスや転職サイトは使わずに転職活動はすべてリージョナルキャリアにお任せしました。
私の想いや希望に寄り添ってくれたおかげで、今の会社に巡り合えたので、とても感謝しています。
今の会社に決めたポイントは?
一番の理由は地元で安心して長く働ける環境があると感じたからです。
転職にあたって、給与や待遇といった条件面も意識しましたが、それ以上に大切にしたのは、「腰を据えて働けるかどうか」「生活の基盤として安定しているか」という点でした。その意味で、地域に根差したインフラ企業であるJR四国に大きな魅力を感じました。
加えて、決断を後押ししたのは、選考中に紹介された「チケットレスプロジェクト」の存在です。
前職では、ITソリューションの営業として多くのシステム提案や運用支援に携わってきたので、サービス開発に関われる点に強く惹かれました。自分の経験を活かせるイメージが明確に持てたのは非常に大きかったですね。
また、面接の中で出会った社員の雰囲気にも安心感がありました。堅苦しすぎず、誠実で真面目。そんな印象を受け、「この人たちと一緒に働いてみたい」と素直に思えました。
愛媛ではなく隣の香川県へ移住することには期待と不安がありましたが、「この会社なら前向きに挑戦していける」そんな確信がありました。
穏やかな職場と心地よい暮らしで実感する“ちょうどいい”毎日。
転職していかがですか?
「転職して良かった」と心から感じています。なにより仕事に対する向き合い方が大きく変わりました。
以前は常に複数の案件を並行して抱えて時間に追われる働き方でしたが、今は残業もなくなり、落ち着いた気持ちで一つの業務にじっくり取り組めています。
現在のプロジェクトチームでは、社内調整やベンダー対応、運用改善といった部分で私の営業経験が活かされています。技術と現場の間を繋ぐ役割として、期待されているという手応えも感じています。
転職して良かったと思うことは?
やはり一番良かったのは、心と時間のゆとりが生まれたことです。そのおかげで、毎日の満足度は確実に上がった実感があります。
仕事の幅は狭くなったというより、“深く”なった印象があります。一つのサービスに継続的に関わることで、細かい改善点や運用の工夫にも目が届くようになりました。
自分の提案が実際の仕組みに反映されていくプロセスを身近に感じられるのは大きなやりがいです。
また、職場の雰囲気も穏やかで人間関係にストレスがなく、精神的にとても安定しています。自分の考えも伝えやすく、しっかりと受け止めてもらえる環境があるのはありがたいですね。
困っていることや課題はありますか?
大きな問題はありませんが、強いて挙げるなら「業界特有のルールや文化に慣れること」でしょうか。
JR四国に限らず、鉄道業界は安全を最優先にする分、意思決定に時間がかかる傾向があり、システム開発の現場とはスピード感が異なる場面もあります。入社当初はそのギャップに戸惑うこともありました。
また、業務で使われる略語や独特の言い回しも多く、最初は意味を調べながら理解を深める日々でした。ただ、その分「なぜこの手順が必要なのか」、背景まで丁寧に知れるので、今では一つの学びとして受け止めています。
生活面での困りごとは特にありませんが、新しい地域での人間関係づくりや土地勘にはまだ慣れきっていない部分もあり、少しずつ馴染んでいる最中です。
生活面の変化はありましたか?
生活リズムは大きく変わりました。まず通勤が徒歩になったことで、朝夕に高松港を眺めながら歩く時間ができ、それだけでも気持ちがリフレッシュされます。
満員電車での通勤だった頃と比べると、ストレスの少なさに驚くほどです。高松は都市機能が整っていながら自然も近く、生活環境として非常にバランスが取れています。
また、新居浜の実家まで車で1時間ほどなので、家族と過ごす時間も格段に増えました。両親のことを気にかけながら、日常を過ごせる距離感が心地良いですね。
転職を考えている人にアドバイスをお願いします。
人によって置かれている環境が違うので一概には言えませんが、決断は早いに越したことはありません。もし転職を迷っている場合は転職支援会社に相談するなど、まずは一歩踏み出してみることをおすすめします。
私の場合は最初から本気で転職を考えていたわけではありませんが、リージョナルキャリアのコンサルタントと話す中で、少しずつ自身の考えが整理されていきました。情報収集だけでも始めてみると、自分に合った選択肢が見えてくることもあります。
特にU・Iターンや地方転職を考えている方にとっては、地元に詳しい第三者の存在はとても大きいです。新しい場所への引っ越しは簡単な決断ではないと思いますが、「住めば都」という言葉の通り、暮らしてみると不安よりも心地よさが勝りました。
焦らず、自分のタイミングで動くこと。そして、信頼できる相談相手を見つけること。それが納得のいく転職に繋がるのではないかと思います。