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瀬戸内の海水を原料とする独自製品で、工業・医薬・農業など多彩な分野に貢献。

セトラスホールディングス株式会社
代表取締役社長 木下 幸治

更新日:2026年9月09日

1960年生まれ。京都大学工学部石油化学科(在学中はアメリカンフットボール部に所属)を卒業後、1985年に三井物産株式会社に入社。2012年、協和化学工業株式会社に執行役員社長付として入社。2013年6月、取締役に就任し、営業部長、医薬品営業部長などを務め、取締役副社長、代表取締役副社長を歴任。2021年10月、代表取締役社長に就任。2022年10月よりホールディングス体制に移行し、事業会社3社と持株会社であるセトラスホールディングス株式会社に再編。同社の代表取締役社長に就任。グループを統括し、「グローバル・ワンチーム」を信条に掲げて国内・海外グループ1,118人の従業員が一丸となって働ける環境づくりの実現に注力している。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

この記事でわかること

  • 瀬戸内の海水から世界を支えるセトラスホールディングス
  • アグリバイオとフードを第3、第4の事業の柱へ
  • 国内外の知性をつなぐ「SETOLAS Lab」と新研究拠点
  • 企画・マーケを軸に、異業界の経験も成長の力に
  • 「Global One Team」で会社を勝たせる組織へ

自然の恵みをコアとして、世界を支える存在に。

協和化学工業は、瀬戸内海の海水を原料にマグネシウム化合物、合成ハイドロタルサイトを軸としたさまざまな製品を開発・製造・販売してきました。

協和化学工業が提供する技術は、ノンハロゲン難燃剤や塩化ビニール樹脂などの安定剤として、情報家電、自動車部品、建築資材、通信ケーブル、包装資材、鉄鋼、電子材料、農業フィルム、繊維など幅広い分野で活用されています。さらに、医薬品の原薬や機能性添加剤など医薬分野でも重要な役割を担い、世界中で利用されています。

マグネシウム化合物で国内シェアトップ、合成ハイドロタルサイトに至っては世界シェアトップを誇っています(いずれも自社調べ/2025年度売上実績)。そんな協和化学工業は、2022年10月に組織を再編し、持株会社体制に移行しました。

これまで進めてきた化学品原薬事業と医薬品事業は、それぞれ事業会社となった協和化学工業とマグミット製薬へ移管しました。また、フード事業を担ってきたキスマ・フードサービスは、セトラスフードテックとして生まれ変わりました。

これら事業会社3社と欧米やアジアの海外子会社5社を統括するのが、持株会社であるセトラスホールディングスです。社名の「セトラス」は、私たちのアイデンティティである瀬戸内海の「SETO」と、地球を支えるギリシャ神話の神・アトラスの「LAS」を組み合わせたもの。「自然の恵みを技術に昇華させ、世界を支える存在となる」という決意を込めました。

中期経営計画第一期を終え、筋肉質な組織に進化。

私たちは、持株会社体制移行前の2020年から中期経営計画「SEBONEプラン」を始動し、2025年に第一フェーズを終えました。この期間は、協和化学工業として培ってきた事業基盤をもとに、セトラスのグループ経営体制へと進化する変革の5年だったといえます。

いかなる環境変化にも対応できる「筋肉質な組織」を目指し、事業ポートフォリオを変更。生産効率の最適化を図り、販売体制も見直しました。従来、海外市場向けのグローバル製品も医薬関係も、商社などを頼りにしていましたが、マーケットに直接向き合うため、グローバル販売体制を整備。現在では、医薬品分野で市販薬を販売するなど、一般消費者との接点も拡大しています。

また人事制度も刷新しました。新卒・中途を問わず多様な人材を積極採用するとともにOJT中心の育成を改め、体系的な教育制度を整備。IT分野でも情報戦略を担う組織を強化し、デジタル変革を加速させています。

ブランディングも大きく変わりました。樹脂業界で圧倒的知名度を誇る『KISUMA』や、医療現場で高い認知と信頼を得ている『マグミット』というブランドを持ちながら、企業としての認知度は低いという課題がありました。

そこで戦略的な広報活動を実践する組織として広報部門を新たに設置。単一ブランドだけでなく、三つの事業会社が連なるセトラスホールディングス全体を見渡した、トータルなコーポレートブランディングを行えるよう体制を整えています。

Global One Teamで、社会に貢献する価値を創出。

中期経営計画の最終ゴールは「2030年に売上高1,000億円」達成です。また定性的には「地球と共生する社会を実現するため、オリジナルの知恵や技術を発揮する会社になる」という目標を掲げています。

2025年の段階で、頭と体の両方を鍛え、強靭な組織になりました。これからの5年は、それを活かし、実行に移す段階です。そのために私は最近、従業員に「会社を勝たせる仕事をしよう」と呼びかけています。

団体競技に例えると分かりやすいのですが、個々の選手は、自分の技量を極めるためだけに練習に励むのではありません。最終的に目指すのはチーム全体の勝利です。同様にセトラスホールディングスグループも、1,000人を超える従業員がGlobal One Teamとなり、みんなで勝つことを目指しています。

当社グループにとって「勝つ」とはどういうことか。それは、社会貢献度の高い製品や価値を提供し続けるということです。優れた難燃剤を提供し、世の中に広がっていけば、火災リスクを減らせます。これは社会に対する明確な貢献です。

高い付加価値を創出することでお客さまから適正な対価をいただけば、それは従業員の報酬に、また新たな価値創造のための投資につなげられます。全てのステークホルダーに対し、最大限の還元をしていくことができます。

社会が良くなるほどに私たちの意欲も高まり、さらに優れた製品を生み出す。この循環を作ることが、「会社を勝たせる」ことなのです。

アグリバイオとフードが、第3、第4の事業の柱に。

当社の事業をこれまで牽引してきた樹脂添加剤分野が、強固な基盤であることは変わりません。加えて、可能性の大きな分野として、医薬品原薬や機能性添加剤、ヘルスケアなどの製品をもっと増やしていくつもりです。また第3、第4の柱も動き出しています。それがアグリバイオ事業、フード事業です。

アグリバイオ事業では、イチゴの独自品種を開発し、ブランド名『Scentberry』(セントベリー)でリリース。これは北海道の会社との共同開発により誕生した品種です。当社が土壌中から新たに発見した植物共生菌を独自技術で培養・製剤化した商品を活用し、糖度や収穫量を高めました。

特に四国では狭小な耕作地で農業が行われることが多いため、農家の皆さんが十分な収入を得るには、付加価値の高い作物を手掛ける必要があります。そこでアグリとバイオを融合させたハイブリッド技術によるイチゴなどの品種を提供し、栽培を進めてもらうわけです。今後はトマトにも対象を広げ、数十億円規模の事業に育てていきます。

地域で育った作物を引き受ける「出口戦略」として機能するのが、フード事業です。社員に栄養価の高い食材を提供したいという想いから始まったこの取り組みは、現在、レストランや惣菜ショップ、通販へと拡大。

農家さんが作る高品質な野菜や規格外品を積極的に活用し、地元の新鮮な農作物をロスなく楽しめるようにしています。「地域型プチ農業サプライチェーン」と呼ぶこのモデルが定着すれば、地域活性化にもつながるでしょう。

成長のエンジンとなるイノベーションセンターを新設。

当社グループの研究開発体制は、非常に多角的に構築されています。持株会社であるセトラスホールディングスのR&D部門をはじめ、協和化学工業やマグミット製薬、アグリバイオ事業部、さらにオランダや中国の海外拠点にも研究開発組織があります。

また、岡山大学や香川大学にラボがあり、今年からは岐阜大学も加わります。京都大学や九州大学などとも連携しており、特に京都大学とは京大桂ベンチャープラザに拠点をつくり、共同研究を進めています。これらすべての研究組織を総称して、私たちは『SETOLAS Lab』(セトラスラボ)と呼んでいます。

そうした研究開発組織・体制を統括するのが、2026年10月に坂出市で誕生するイノベーションセンターです。このセンターは、セトラスラボに属するさまざまな研究者が自由に出入りでき、世界中の研究者や外部の研究機関が集って情報を共有し、連携するハブとしての役割を果たします。

このセンターには、約200人を収容できる厚生棟も併設し、専門領域の異なる技術者同士が日常的に交流できる環境を整えます。オープンスペースでの対話や気軽なコミュニケーションを通じて、既存の概念にとらわれない柔軟な視点を取り入れ、新たな価値の創出につながるヒントが見出せるかもしれません。

社内の多様な知性が混ざり合うことで、多くの化学反応が起こるでしょう。それが革新的なイノベーションを起こし、セトラスの新たな領域を切り拓く、成長のエンジンとなってくれるはずです。

企画・マーケ分野を始め、多彩な人材が必要。

社長の私自身も転職でここにやってきた一人ですが、瀬戸内には都市圏では得られない、独創的なアイデアを生み出すチャンスが溢れていると感じます。

私たちが求めるのは均一な人材ではありません。賑やかな人、おとなしい人、猪突猛進型、沈思黙考型、いろんな人がいる、多様性のある組織にしたいと思います。

化学や医薬品の知識に固執する必要はありません。むしろ、自動車や航空機、産業機器といった異業界での経験を持つ方が、既存の枠組みを壊す新たな視点をもたらしてくれると考えています。

現在、特に重点的に求めるのは、企画・マーケティング分野の経験・スキルを持つ人材です。私たちは世界に誇れる技術力と製品ポテンシャルを有していますが、その価値を最大化するには、市場の冷静な見極めと戦略的判断が欠かせません。製品の可能性を掘り起こし、勝てる戦略を描いてプロジェクトを牽引できるリーダーの存在が、今後の成長の鍵を握っています。

また、どの職種であれ、共通して求めたいことは「社会的意義の高い付加価値の提供で、会社を勝たせる」という強い熱意です。自らの専門性を武器に、高い志を持って挑戦し続ける「とんがった」人材が、当社の未来を切り拓きます。

私は今も、この会社が持つ無限の可能性にワクワクしています。私たちと共に、自らの夢の実現に向けて情熱を注いでください。

編集後記

コンサルタント
森 友良

木下社長のお話から、持株会社体制への移行を経て、社内に確実な変化が起きていることを実感する取材となりました。

グローバル販売体制の整備やデジタル変革、さらにアグリバイオやフードといった新たな事業の柱の確立など、あらゆる面で「筋肉質な組織」へと進化を遂げている同社。

2026年にはイノベーションセンターも誕生し、これまでの変革を原動力に次なる実行のフェーズへと突き進む熱い想いを感じました。「Global One Team」としてさらなる社会的価値の創造へ挑む、セトラスホールディングスグループの今後が非常に楽しみです。

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