![]()
独自の提案力と特注対応力で地域インフラと景観づくりを支える。
日本興業株式会社
代表取締役社長 山口 芳美
1980年 松山商科大学(現:松山大学)を卒業。地方自治体の公務員を勤めた後、1983年 日本興業株式会社に中途入社し、総務全般を担当。その後は人事・労務領域でキャリアを重ねる。採用活動にも中心的に携わり、ほぼ全社員の顔と名前が一致するだけでなく、それぞれの社員が何にやりがいを感じ、どのような場面で力を発揮するのか、といった情報まで熟知。2012年 取締役執行役員、2020年 取締役常務執行役員を経て、2024年 代表取締役社長に就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
土木・景観・エクステリアの3事業を展開。
日本興業は1956年、コンクリート二次製品メーカーとして産声を上げました。以来、着実に歩みを進め、2026年8月に創立70周年を迎えます。現在、東証スタンダード上場企業であり、連結売上高は約163億円(2026年3月期)にまで成長しました。
当社の事業は三つの柱で構成されています。売上の約7割を占める「土木資材事業」は公共インフラの老朽化対策や国土強靭化といった社会の要請を背景に、安定した需要を持つ当社の屋台骨です。
「景観資材事業」は、都市再開発や公共空間の美化ニーズに伴う成長領域と位置付けており、「エクステリア事業」はハウスメーカーとの強固な協業体制の構築やEC展開を積極的に進めています。
コンクリート二次製品を製造するメーカーは全国に多数存在しますが、土木資材・景観資材・エクステリアという三つの事業領域をすべて手がけている企業は、国内では当社だけではないでしょうか。
また当社は国内に複数展開する営業・生産拠点により全国への供給体制を確立しています。このような広域展開も当社の大きな強みです。
当社の製品は、社会基盤を支える大型土木製品から個人邸宅のお庭での水回り製品に至るまで、人々の暮らしの至るところに存在しています。直近では2025年オープンの「あなぶきアリーナ香川」周辺道路にも当社の舗装材などが採用されました。
数年先を見据えた公共事業の長期的視点とスピード感が求められる民間事業の対応力を高度に両立させ、社会のインフラと住環境を力強く支え続けています。
技術開発力で、コンクリートの可能性を拓く。

土木資材事業領域は国が定めた規格に沿った製品が多く、差別化が難しいのが実情です。その中でも、当社は近年、港湾という分野でも独自の強みを発揮しています。
巨大なクレーンが日々行き交うため摩耗が激しい港湾施設向けに強固なRC構造の走行路版を開発。耐摩耗性に優れ、メンテナンスの手間を大幅に削減できるため、神戸港を中心に採用が進んでいます。
環境負荷低減も大きなテーマの一つです。コンクリートの主原料であるセメントは通常、製造過程で大量のCO2を排出します。代替材の活用でCO2排出量を50%以上削減した「Necoコンクリート」や、セメントを一切使わず天然素材のみを使用した環境に優しい製品を開発・実用化し、環境対応を加速させています。
景観資材事業においても、当社の開発力と技術力が発揮されています。景観資材事業の原点は、当時の社長がヨーロッパを訪れた際に目にした歴史ある石畳の街並みです。
石材の持つ豊かな風合いや趣をコンクリートで再現できないか。その想いから、天然石の質感を追求しつつ、工業製品としての施工性や機能性を高める独自の開発が始まったのです。
この開発力が評価され、あなぶきアリーナ香川やサンポート高松、四国水族館といった香川県内の名所にとどまらず、東京都庁や国立競技場といった日本を代表するランドマークでも当社の製品が使用されています。
2025年の大阪・関西万博でも西ゲートから大屋根リングに続く舗装材や、会場内随所に設置された円形ベンチ、雨水処理用の側溝など、会場の至る所で日本興業の製品が活躍していました。
建築家やデザイナーのこだわりを製品に反映。
当社の成長の原動力となっているのが、「入設力(にゅうせつりょく)」です。入設力とは、役所や建設コンサルタントのニーズに応える高度な提案力と、それを具現化する製品技術・施工力を合わせ、お客さまの発注仕様に自社製品を織り込んでいただくことです。
建築プロジェクトの上流にあたるのは、デザイン事務所や設計事務所です。当社には、ここへの提案活動を専門とする営業推進部というセクションがあり、発注者のもとに頻繁に足を運んでいます。
そこでは例えば、「海面のようにキラキラと光る舗装材はできないか」「環境に配慮した素材で淡い桜色を実現したい」といった、クリエイターたちのこだわりを持った要望が出てきます。
こうした要望に対し、当社では社内のデザイナーや開発部隊が一体となり骨材の選定を行い、調合を何度も繰り返しながら、発注者のイメージを形にします。ユーザーニーズを具現化する複雑な「特注力(とくちゅうりょく)」のプロセスを経て生み出された製品は、他社が容易に真似できるものではありません。
それを発注者に採用してもらうことで、優位性を確立できるのです。この入設力と特注力が、価格競争に巻き込まれないクオリティ重視のビジネスモデルを支えています。
当社は20年以上前から女性を中心としたチームを編成し、細やかな感性が求められる景観資材事業の提案活動を推し進めてきました。男性中心だった土木・建築業界において、いち早く女性を登用したのは、「既存事業に依存せず常に新しい価値を創造しなければならない」という経営判断があったからです。
M&Aの活用で、全国展開の体制を整える。

M&Aについても、当社は早くから実践してきました。四国から岡山、兵庫へ進出する際も事業提携やM&Aを戦略的に活用しており、今や当社のDNAの一部となっています。
一般的にM&Aでは異なる企業文化の融合に苦慮するケースも多いようですが、長年このプロセスを繰り返してきた当社には多様な背景の仲間を自然に受け入れる土壌があります。
土木資材製品は重量物なので、物流コスト低減のため、製造拠点を施工現場の近くに置くことが肝要です。2022年、東日本での展開をさらに進めていこうと、茨城県のコンクリート二次製品工場を事業譲受しました。
ゼロから工場を建設するには膨大な時間と資金を要しますが、事業譲渡やOEM生産といった手法を駆使すれば、生産の基盤を迅速に整えられます。こうした手法を活用し、今後も広域での事業展開を推進していこうと考えています。
2023年には鹿児島県の葉月工業株式会社を新たな仲間として迎え、九州市場において、念願の事業拠点を確保できました。
シラス台地の厳しい土壌における法面工事で培われた同社の高度な施工技術は、大きな資産です。今後、同社の施工技術と当社製品技術の連携を通じて事業の拡大を図ります。
当社がM&Aを有効に続けてこられたのは、「人」を大切にする姿勢を貫いてきたからです。これまでも、そしてこれからも統合にあたっては、トップが同じ志を持っているかを確認することはもちろん、譲受する企業の社員の雇用と待遇を守り抜くことを最優先に実行していきます。
中期経営計画を実行中。第4の事業の柱も構築。
2025年4月、10年後の未来を見据えた中長期経営計画「Nikko Revolution Towards 2033」を策定・公表。2033年までに連結売上高250億円、営業利益20億円という目標を掲げ、全社員が一丸となって取り組んでいます。
第一フェーズ(2027年度まで)の目標売上高160億円、営業利益8億円から2033年度の目標に至るまでには、高い成長を維持していく必要があります。
第一フェーズは数年前からの仕込みが実を結び、1年前倒しで達成できましたが、この成果を継続するには、数年先を見据えた活動を行わなければなりません。国土強靭化やインフラ老朽化対策、また大都市圏の再開発のニーズを着実に捉え、さらに東日本・九州市場の開拓に取り組んでいきます。
そして、現在の売上に100億円積み上げる計画を達成するために、既存3事業に続く「第4の柱」も立てたいと考えています。
着目しているのが「インフラマネジメント」という領域です。高度経済成長期に作られたコンクリート構造物が一斉に寿命を迎える中、すべてを作り直すのではなく、既存のインフラを点検し、適切に補修して長寿命化を図るニーズが急増しています。
当社はインフラの点検から補修までを一貫して担う体制を構築しており、今後は点検のしやすさや高耐久性に力点を置いた製品や施工方法をさらに生み出し、全国の市場を開拓しようとしています。
もう一つ、私の重要な責務があります。それは次代を担うリーダーを育成し、確実にバトンをつなぐことです。日本興業が築いてきた信頼を礎に、変化を恐れず挑戦し続ける組織文化を次世代へ継承していくことが、持続的な企業価値の向上に直結するでしょう。
人に対する誠実さと好奇心があれば、ここで成長できる。

Nikko Revolution Towards 2033の達成を目指して進む当社に必要なのは、自身の経験やスキルを基盤として「これができる」「これをやりたい」と表明し、強い意欲で取り組んでくれる人材です。業界経験や知識ではなく、個々の志や仕事に臨む姿勢を評価したいと考えています。
何よりも大切にしているのは、仕事に対する誠実さと好奇心です。お客さまの潜在的なニーズを汲み取る力や、チームで高め合う協調性、そして既成概念にとらわれず「もっと良い方法はないか」と問い直す変革の意欲が、日本興業には必要なのです。
アクションキーワードの「REVOLUTION」には、社員一人ひとりが自律的に意識と行動をアップデートしてほしいという強い願いを込めています。これからも意志ある人に権限を委譲し、ボトムアップで新しいアイデアが生まれる組織へと進化させていきます。
経営を担う立場にある者としては、長期的な視点から当社の未来を共に議論できる、経営企画的な視点を持ったパートナーがいてくれるとありがたい、という気持ちもあります。
業界動向を収集したり競合を分析したりするうえで、日本興業のあるべき姿について第三者的な視点で議論できれば、経営決断をより確かなものへ昇華できるでしょう。
私たちの手がけた仕事の成果は、50年、100年と形に残るインフラや景観となって社会を支えます。自分が携わった製品が街の一部となり、家族や友人に誇りを持って語れる。
それは何物にも代えがたいやりがいです。上場企業としての堅実さと、ゼロから仕組みづくりに挑戦できる面白さを、ここで味わいませんか。