「NOと言わない」企業文化で、見えないニーズを形にし、街中の社会課題を解決。
四国化成建材株式会社
代表取締役社長 眞鍋 宣訓
1988年、四国化成工業株式会社に入社。建材事業に配属され、千葉や仙台で営業を担当。その後、本社部門で物流購買部長や営業統括、事業推進本部長を歴任。2023年、四国化成工業がホールディングス体制に移行。事業部を分社化する形で四国化成建材株式会社が設立されたのに伴い、代表取締役社長に就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
四国化成グループの建材領域を担う会社。
四国化成建材は、四国化成のホールディングス化により、建材領域を担う事業会社として2023年に誕生しました。
事業の柱は住宅用の「内装材・外装材・舗装材」、カーポートや門扉などの「住宅エクステリア」、公共施設や店舗など都市空間に欠かせない大型門扉・フェンス・駐輪場・通路屋根・手すり・ゴミ集積庫といった商品を提供する「景観エクステリア」の3部門です。
「今までになかったものを一歩先に開発し、見えないニーズをワクワクに変える」をミッション・ビジョン・バリューとして掲げ、社会にワクワクを提供することを目指して事業を進めています。
他にない空間を演出する塗り壁「JULUX」。
そんな当社の特徴を語る上で欠かせないのが、日本の風土に合った塗り壁の良さを現代に活かした住宅用内装材の「JULUX(ジュラックス)」です。
これは、1970年に誕生した業界初の湿式内装仕上材(塗り壁材)で、自社製化学糊料を活用して従来は高度な職人技が必要だった聚楽壁(じゅらくへき)を工業製品化したことで、日本初の工業化塗り壁材となりました。
JULUXは塗り壁なので、クロスのように均一ではなく、複雑でさまざまな表情を見せる壁に仕上がります。仕上がりの均一性を求められる部屋には向きませんが、住空間を個性的に演出したい、というお客さまにとって興味深い商品なのです。
当社では毎年、建築施工作品を対象とした空間デザインコンテストを開催していますが、上位作品の半数以上が塗り壁を使っています。
最近は和室のない住まいも増えていますが、洋室でも塗り壁を使用するケースが増えてきて、店舗、オフィス、あるいはガーデンといった多様な空間へとその活躍の場を広げています。
公共施設やビルの壁が塗り壁になっており、多くの人に癒しを提供する事例も増えています。
「他にはない空間にしたい」というニーズに対し、魅力的な提案をできるのがJULUXです。新たなマーケットを掘り起こすための重要な商材として、これからも大切にしていきます。
営業部門の「提案専門スタッフ」の存在が強み。
当社の事業を牽引するのは住宅・景観の両エクステリア部門で、売上の9割以上を占めます。そのうち、「住宅」向け商品は2割強。8割近くが公共施設、店舗、工場など、当社でいう「非住宅」向け商品によるもので、業績の中核を成しています。
少子高齢化の影響でかつて160万戸あった住宅の年間着工戸数が80万戸にまで落ち込み、「住宅」分野は競争が激化しています。競合大手が大量生産品を投入しており、同じ土俵で戦っても価格競争に巻き込まれるだけです。
人口減社会で勝ち残っていくには、オリジナリティを発揮し、確かな提案力でお客さまに頼りにしてもらうことがより大事です。
たとえニッチなマーケットであっても、お客さまの要望に応えて個性的な商品を提案し、シェアトップを目指す。そんなやり方が当社には合っています。
「非住宅」エクステリアにおいても、当社は「提案型」のスタイルを貫いています。
実は、当社の非住宅系営業スタッフの中で実際に代理店に商品を販売しているのは約6割。残りの4割は売上目標を持たず、直接設計事務所や自治体などに対して「当社の製品を使うとどんな空間づくりができるか」という提案に専念しています。
商品の特徴をアピールし、建築図面への採用が決まれば、注文は自ずと代理店から入ってくるのです。
当社で提案専門スタッフの活動が始まったのは、約30年前。長期間をかけて設計事務所や自治体と関係を育み、常に当社の商品カタログがそこにある状態を創り上げてきました。
これをどこかが真似しようと思っても、営業スタッフのうち約4割が数字を持たないという状態を我慢できる会社はめったにありません。
当社の30年間の積み重ねがあって、今や全国の設計事務所や市町村、教育委員会に、当たり前のように当社のカタログが置かれています。中長期を見越した提案戦略が実を結んでいるわけです。
全国の一級建築士に選ばれるエクステリアメーカー。
エクステリア製品は意匠・デザイン性がとても大事です。しかしそれだけではなく、当社は「災害に強い」ことを重視しています。
当社の製品はスーパーゼネコンが担当する大規模建築物に数多く採用されています。すなわち、大規模建築物と同程度の強度が求められるということです。
エクステリア業界にはこれまで耐久性・耐震性に関する公的基準が存在しませんでした。建築基準法などに沿った製品を作ろうとすると、コストが上がってしまうからです。
しかし当社は、30数年前から当たり前のように建築基準法に基づいた強度基準をクリアした商品づくりに取り組んできました。
価格競争で不利になることもありましたが、当社は価格ではなく、強度やデザインなどの品質価値で勝負したいのです。
世の中に送り出すなら、納得のいく製品づくりをし、その価値をお客さまにしっかり説明して理解していただくのが本来の仕事です。
当社はスーパーゼネコンの高い要求に、NOと言わず、逃げずに歯を食いしばって台風や豪雨に簡単にやられない商品づくりを行ってきました。
ある建築業界誌が一級建築士に対し「採用したい設備・建材メーカー」というアンケートを実施したところ、門扉・フェンス・塀の部門で、四国化成建材が1位に選ばれました。
長年大事にしてきた当社のポリシーが伝わったと感じて、とても嬉しかったですね。
私たち自身がワクワクすることで、一歩先の価値が生まれる。
2025年3月、新たな価値を発信しました。それが、自然と環境をテーマにした新ブランド「MEGLIO(メグリオ)」です。
「人と自然のあるべき未来を見据え、心地よい空間を提供する」を商品づくりの根幹に置き、脱炭素、持続可能性のある社会の実現に結びつけていきます。
既に商品として挙がっているのは、屋根に太陽光発電を備えたソーラーカーポートです。これは、カーポートのメーカーである当社と太陽光発電に実績のある企業との協働により誕生した製品。他にも国産の木材を使ったエクステリア商品などを考案中です。
2024年11月にリリースした「アクセルブースト」という商品も、MEGLIOブランドで展開します。アクセルブーストは門柱や門扉などの基礎工事用のセメントミルクで、超速硬という特徴を持っています。
従来、コンクリート基礎は24時間以上の養生が必要でしたが、アクセルブーストを用いると約3時間で完成します。工事が1日で完了するので、職人不足による工事の長期化といった社会課題の解決に貢献できます。
さまざまな用途開発が期待できるので、お客さまの声を聞きながら育てていきたいです。
NOと言わない。「何とかしてほしい」という声に応え続ける。
最近、スローガンとして掲げているのが、「NOと言わない」です。私が営業時代、上司から「できないと言わない。どんな話でも持って帰ってくるように」と言われていました。
私は設計事務所や自治体に提案に出かけ、「こんなことはできるか」というお客さまからの相談にNOと言わず、すべて持ち帰りました。
内心は「当社にどうにかできるのか」と不安で一杯です。でも会社に戻っていろんな人に相談すると、できる道が見つかるのです。
当社で対応できない案件も、「◯◯という会社に頼んでみるといい」と上司に教えてもらい、行って相談すると何とかしてくれるのです。
数々のオリジナル商品がうまれたのは、「知恵を集めて何とかする」という経験の積み重ねがあったからです。今や商品ラインナップはバラエティに富み、お客さまのさまざまな悩みを解決できるようになりました。
しかし、今ある製品を作るのに精一杯で、新たな課題と向き合う余力が失われているようにも感じます。私たちが「非住宅」分野で個性的な商品を送り出そうとするなら、お客さまの声を見過ごしてはいけません。
街中を見回した時、違和感のある風景に出くわすことがあります。例えば、倒れそうになるのに放置されているブロック塀。
公共施設のブロック塀が壊れると大きな被害となる可能性もあるのに、なかなか改善されません。当社にはアートウォールという軽量壁があり、ブロック塀を代替することができます。
ベースにあるのは、「四国化成建材に相談すれば何とかなる」とお客さまに思ってもらえる存在になることです。当社のような「NOと言わない」スタンスに共感して、一緒に社会課題に向き合ってくださる方に、ぜひ仲間になっていただきたいです。
求めているのは、エクステリアのプロダクトデザイナーと空間デザイナーです。当社には機能や構造を考える人はたくさんいるのですが、製品の意匠、空間デザインを考える人材が不足しています。
また製造についても、工場のマネジメント経験がある方に知恵を借りたいと思っています。もちろん営業職も大歓迎で、働き方の希望を伺ったうえでお互いの要望をすり合わせていきたいと考えています。