創業140年余の歴史を礎に、顧客のパートナーとしてグローバルに進化し続ける。
カトーレック株式会社
代表取締役社長 宇田 昌弘
高知県出身。関西大学社会学部を卒業後、証券会社を経て、1991年に松下寿電子工業株式会社(現:PHCホールディングス株式会社)に入社。海外赴任を通じた電子部品購買や事業提携、製薬会社の事業買収プロジェクトリーダー、さらにはCFOといった要職を歴任し、グローバルな視点と財務戦略における高度な専門性を培う。2019年、カトーレック株式会社に常務執行役員経営企画担当として入社し、2023年4月に取締役専務執行役員としてEMS事業本部の本部長に就任。2025年4月、同社代表取締役社長に就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
グローバル8,000人を率いる覚悟と変革への挑戦。
カトーレックは、1877年に海運業として産声を上げて以来、陸運業、そしてEMS(電子機器受託製造)事業へと業態を拡大させてきました。現在はEMSと物流の二つの事業領域を柱に独自の企業活動を展開しており、世界10か国に自社拠点を有するグローバル企業へと成長しています。
「モノをつくる」エレクトロニクス事業(EMS事業)と、「モノをはこぶ」ロジスティクス事業(物流事業)、この二つを融合させた「ロジトロニクス」という独自の価値提供を掲げ、お客さまのサプライチェーンを包括的にサポートしています。
この「ロジトロニクス」という概念は単なる事業の組み合わせではなく、競争が激化する市場において持続的な成長を遂げるための戦略的な差別化要因となっています。物流のノウハウがEMS事業の高度なサプライチェーン管理を支えており、このシナジーこそがお客さまにとって代替の難しいカトーレックならではの強みを生み出しているのです。
そんなカトーレックの代表取締役社長に就任し、約8,000人のグローバルチームを率いる立場となった今、その責任の重さに身が引き締まる思いです。私が目指しているのは短期的な成果の追求ではなく、当社が持続的に成長発展していくための揺るぎない強固な基盤を築き上げることです。
そのためには、組織も、人も、仕組みも、すべてにおいて、お客さまの期待を超える価値を提供し続けられるよう、我々の力をより一層高めていく必要があります。
私のこれまでのキャリアは、グローバル企業における財務戦略、事業再編といった経験が中心です。こうした外部で培った視点や経営手法をカトーレックのさらなる飛躍に活かしていくこと。それが、創業家以外から初めて社長に就任した私の使命であると認識しています。
具体的に注力していくテーマは大きく二つあります。一つは当社の強みであるEMS事業のさらなる強化、もう一つは人材育成です。EMS事業では、当社の培ってきたグローバルネットワークと技術力をさらに磨き上げ、お客さまの期待に応える高品質な製造サービスを追求します。
また人材育成では、若手からベテランまで社員一人ひとりが切磋琢磨しながら成長できる環境を整え、変化に強い組織づくりに繋げていきたいと考えています。この二本柱の取り組みに覚悟を持って挑み、新たな変革を推進していきます。
EMS事業のさらなる成長を実現していくための三つの軸。
当社のEMS事業は1980年頃にスタートし、国内外の生産拠点で電子機器の製造を受託するサービスを提供してきました。従来はお客さまから支給された製造仕様書通りに製造することが中心でしたが、近年では一部の設計支援をはじめ、量産に向けた工程設計や生産設備の提案まで求められるケースも増えています。「言われたものを作るだけ」の受託者ではなく、開発支援や部品調達、設備提案まで含めたトータルなソリューションの提供が求められているのです。
EMS事業が大きく伸びている背景には、大手メーカー各社で生産のアウトソーシングが加速している点が大きいです。自社工場を構えるよりEMSに委託した方が効率的という認識が浸透し、成熟した製品では自社の設備投資を抑えるため、成長期には迅速にキャパシティ拡大をはかるためにEMSを活用する動きが増えています。さらにEMS企業側の技術力向上も相まって、メーカーにとってEMSを活用するメリットはますます大きくなっています。
では今後、EMS事業のさらなる成長をどのように実現していくか。私は成長の機会を大きく三つの軸で捉えています。第一に「地域軸」です。昨今、経済安全保障やサプライチェーン上のリスク対策として生産拠点を変更する中で国内回帰という動きが出ています。そうした需要に対応し、日本国内を含む需要が拡大する国での生産・供給体制を強化できれば、大きな成長に繋がると考えています。
第二に「業界軸」です。当社の取引先は自動車、事務機器、家電、産業機器、医療機器など実に幅広い業界に及びます。市場環境の変化による影響を最小限に抑えるには、一つの分野に過度に依存せず多様な業界に展開していくことが重要です。今後も幅広い業界での事業展開を推進し、いかなる経済環境下でも成長し続けられる企業を目指しています。
直近でそれを物語るトピックスとしては、2024年2月に打ち上げ成功した国産ロケット・H3への参画が挙げられます。自動車業界を含む幅広い業界で高い技術力を磨いてきた実績が評価されてお声がけいただき、メインエンジンの制御基板の一部設計と製造を当社が担当しました。
ロケット打ち上げまで10年近くかかる長期プロジェクトでしたが、目先の利益だけを追うのではなく、まずはチャレンジしてみようという創業以来の社風も成功の背景にあると思います。H3での実績が次のプロジェクトにもつながるのです。
そして第三が「製品軸」です。現在の売り上げ構成は回路基板製造が中心ですが、顧客から求められる製品は半完成品や完成品に近いものまで拡大しています。EMS企業として「ものづくり」の基盤である生産技術・製造力を徹底的に強化していきながら、その上でお客さまのニーズに合わせて設計支援や部品調達といった付加価値も提供できるよう専門性を高め、単なる製造請負を超えていきたいと考えています。
ボトムアップ型の社風づくりで組織体制を強化。
当社は良い意味で家庭的でチームワークが良く、仲間意識の強い社風です。また、お客さまに対しても非常に真摯で、一度お預かりした案件は最後まで責任を持ってやり遂げる文化があります。こうした温かみや熱意のある風土は当社の強みであり、これからも守っていきたい部分です。
一方で、変えていきたい風土もあります。「お客さまの要望を愚直にこなす」というこれまでのカトーレックの強みは守りながら、変化の激しい時代に対応して従業員の成長を加速させるためにも、自ら考えて意見やアイデアを積極的に発信できること、行動に移せることを大切にしていきたいと思います。
そのためにも組織体制の強化が必要だと考えています。現在の人材構成を客観的に見渡すと、若手・中堅層がやや薄く、ベテラン層に偏っているという課題があります。これまで事業拡大に際しては、メーカー出身の経験豊富な方を迎えて戦力強化を図ってきました。
それ自体は大切なことですが、今後は若手から中堅にかけてのポテンシャル採用も積極的に行い、新卒も含めて計画的に育成していきたいと考えています。新卒も若手中堅もベテランも、それぞれが活き活きと活躍できる会社にしたいです。
そして、若い社員から上がってきた提案はできる限り採用し、失敗を恐れずチャレンジできる風土、社員一人ひとりが主役になれるボトムアップな風土を醸成していきたいと考えています。その変革が、持続的な成長には不可欠だと信じています。
ハード・ソフトの両面から競争力を高めるための戦略的新拠点。
2025年3月、香川県高松市に新たな本社工場が竣工しました。この新たな拠点は、高松本社と高松工場、そしてグローバルEMSセンターという三つの機能を集約しており、管理部門や製造部門、営業部門などが一堂に会する複合拠点となっています。
同じ屋根の下で顔を合わせることで部署間の壁が取り払われ、日常的にコミュニケーションが取りやすくなりました。現場と経営の距離が近づいたことで意思決定のスピードも上がり、お客さまへの対応力も向上すると期待しています。
この本社工場の建設は当社にとって戦略的な投資でもあります。ものづくりの国内回帰の動きに対応して国内生産能力を強化する狙いがあり、さらにグローバルEMS事業の中枢拠点として、海外を含む全生産拠点を高松から支える役割も担っていきます。
この統合拠点が竣工したことで、世界中の生産ネットワークを本社から一元管理し、どの工場で課題が発生しても迅速にサポートできる体制が整いました。
人材獲得が年々難しくなる中、少しでも魅力的な職場環境を用意する重要性が増しています。食堂にもこだわり、屋島が見渡せる開放的な景色の中で食事ができると社員からも好評です。
私は、創業の地である高松にこのような基幹拠点を構えられたことを非常に嬉しく思いますし、地域貢献という意味でも意義深いと感じています。これからも四国に根ざしながら世界に挑戦し続ける企業として、ハード面とソフト面の両輪で競争力を高めていきたいと考えています。
好奇心と情熱が、これからのカトーレックを創る。
カトーレックで働く魅力は、何と言っても世界中のさまざまな製品づくりを陰で支えられる点にあります。私たちは「縁の下の力持ち」として数多くの企業の生産をお手伝いしており、毎日が新鮮な学びと発見の連続です。
世の中のニュースがそのまま自分たちの仕事に直結してくるダイナミズムがありますし、自分の関わった製品が世界中で人々の役に立つという大きなやりがいも得られます。
表舞台に立つメーカーではありませんが、チャレンジできる機会と成長の余地が存分にあるフィールドだと自負しています。技術者にとっても、世界の時流に乗った多様な製品づくりに携わることで幅広い技術力を身に付けられる面白さがあると感じています。
私は、変化を楽しみ、自ら学び、成長し続けるマインドを持った方と一緒に働きたいと考えています。好奇心旺盛に仕事に取り組む人は自らどんどん吸収し成長していきますし、そうした姿勢が新たな価値を生み出す原動力になります。
一方で、指示を待って与えられたことだけこなす受け身の姿勢では可能性も広がりません。当社では手を挙げればチャンスを得られる風土がありますから、ぜひ興味と情熱を持って飛び込んできてほしいですね。
カトーレックはまさに今、変革期の真っただ中にあります。四国に根ざしながらも世界を相手に事業を展開し、次のステージへと挑戦を続けています。これから仲間に加わる皆さんにも大いに期待していますし、ともに会社の未来を創っていくパートナーになっていただきたいです。
変化を恐れず前向きにチャレンジできる方であれば、きっと当社で大きな成長機会を掴めるはずです。皆さんとお会いできる日を心待ちにしています。